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2015年3月

2015年3月16日 (月)

社会保険給付の控除方法

今回は、技術的な内容となりますが、労災問題に関わる、実務上重要な最近の最高裁判例を紹介したいと思います。


労働災害が発生すると、被災労働者又は遺族は、事業者に対して民法上の損害賠償や、労基法上の災害補償を求めることができます。

しかし、これ以外にも、様々な社会保険給付を受けられる場合があり、労働者災害補償保険法の保険給付も、このうちの一つです。


このような給付を受けた場合、事業者の損害賠償額から、給付額を差し引かれることがあります。

労災保険の遺族補償年金についても、従来から、損害賠償額から差し引かれることが、判例上認められていました(最高裁平成16年12月20日判決)。


しかし、差し引く方法については、従来の判例は、損害賠償額の「遅延損害金」からまず差し引くべきである、と解釈できる判断をしていました。

遅延損害金というのは、労災事故の日から発生する利息のことで、法律上、年5%とされています。


まず遅延損害金から差し引いて、まだ残額があれば、元本から差し引くという方法の方が、賠償を受ける側にとっては有利になります。


しかし、最高裁は、この従来の判例を変更し、遺族補償年金は、損害賠償額の「元本」から差し引くべきであるとの判決を出しました(最高裁平成27年3月4日判決)。


従来の判例に対しては、反対説も強く、その後の最高裁判例の傾向からすると、今回の判例変更はある程度予想されていたものといえますが、最高裁の立場が確定したわけですから、実務的な影響は大きいでしょう。

そして、労働者側にとっては、元本から差し引かれることにより、受け取ることのできる金額が減ることになってしまいます。


遅延損害金の金額なんて大したことはないのでは、とお思いになる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、元本の金額が大きいと、利率が5%で計算されますので、かなり大きな額になります。

例えば、損害全体が1億円であれば、遅延損害金は、1年で500万円になります。

(なお、年5%という法定利率については、現在、法律を改正して引き下げる方向で議論が行われています。)

このように、損害賠償金以外にも様々な給付がありますが、これを受け取った場合に、損害賠償額から差し引くことになるのか、差し引く場合にどのように計算するのかは、給付の性質によって議論があり、結論も異なります。

損害賠償額を計算する際には、このあたりについての理解も必要不可欠なのです。

(弁護士 佐藤 優樹)

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2015年3月 2日 (月)

セクハラと懲戒処分

2月26日に,セクハラをした男性従業員に対する出勤停止と降格処分が争われた事件の最高裁判決が出ました。

事件の内容は,男性従業員が派遣社員やこの会社から業務を請け負っている派遣会社の社員に対し,性的な発言をした(具体的な発言内容は割愛します。)というものです。

発言自体がセクハラに当たることは1審から最高裁まで一致しています。
ただ,セクハラをしたことに対する処分が重すぎるかどうかについて判断が分かれました。1審は,処分は妥当だと判断しましたが,2審は,重すぎると判断しました。

最高裁判所は,処分が妥当だという1審判決を支持しました。

その理由として,発言内容やセクハラをしていた期間に加え,会社がセクハラ防止を重要課題として位置づけ,禁止文書を作成したり研修への参加を義務付けていたこと,男性従業員が管理職の立場であったこと,セクハラの結果,派遣社員が会社を辞めたことから,会社の職場規律に及ぼした影響は見過ごせないとを挙げています。

また,2審は,派遣社員が明確に拒否しておらず,許されていたと誤解していたことを男性従業員に有利に考えましたが,最高裁は,職場のセクハラについては被害者が抗議,抵抗,会社への被害申告を控えたりすることが少なくないので,余り有利な事情にはならないというようなことを言っています。

2審は,処分を受ける前に会社から警告や注意等を受けていないことなども有利な事情としましたが,最高裁は,管理職だから会社のセクハラ防止に関する取組などは当然把握すべきだし,第三者がいない状況でなされていることが多く,会社が被害の事実を認識して警告等をする機会がないこと等から,これも有利な事情とは捉えませんでした。

(弁護士  髙 井 善 達)

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